Photo by Cory Doctorowこんにちは。倉内です。
ITエンジニアを目指している方の中には、「入るならやっぱり自社開発のほうがいい!」と考えている人が多いでしょうか。
SIerのような受託開発の企業に入ると「納期に追われるのがつらそう」「顧客に振り回されそう」といったイメージがあるかもしれませんね…。
私は新卒で前職の大手SIerに入社し、交通事業者をお客様とする受託開発の案件に携わっていました。確かに大変なこともありましたが、社会人としての土台を築いた場所でもありますし、振り返ってみると経験できてよかったなと思うこともたくさんあります。
そこで今回は、自身の経験をもとにSIerで働いてよかったことをお伝えしていきたいと思います。
私の簡単な経歴
大学(情報工学)→大手SIer→paiza(ギノ)
前職のSIerには約8年間在籍し、現場の担当者からPL・PMまでひととおりやりました。
携わった案件は元請け7割、二次請け以降3割くらいで交通事業者にシステムを納めるSEでした。業務は要件定義などの上流工程とマネジメントが中心でした。
SIerに入ってよかったこと
意外に新しい技術を使った開発ができる
SIerに入ると古い技術でしか仕事ができないと思っている人は多いと思います。
実は在籍中はお客様にクラウドでWebサービスを提供する案件やスマホアプリを開発する案件も多く、私の場合はそこまで古い技術と対峙した経験はありません。AWSやAzureなども必要に応じて使っていました。
また、当時はまだ機械学習やAIはそこまで話題になっていませんでしたが(少なくとも前の職場では)、Pythonで大量データを扱う案件もあったりして、先輩が珍しく目を輝かせて「その案件担当したいです!」と手を挙げていたのを覚えています。
一方で、イメージされるとおりの20年近く前に稼動した大規模システムをCOBOLやC言語で保守するといった案件もありました。
もちろんSIerすべてがそうとは言えませんし、配属次第…ということもあるのですが、結構新しめのことをやっている会社(もしくは部署)も多いのではと思います。
お客様の課題を解決する喜びを味わえる
受託開発では顧客から依頼を受けてシステムを開発するため、絶対に必要とされるシステムであるというのは1つの魅力ではないでしょうか。
私が携わっていたのは交通事業者が使う業務システムですので、安価ではありませんし、プロジェクト開始から納品まで数年かかる場合もあります。
それだけのお金と時間をかけ、期待を込めて依頼されたシステムというのはプレッシャーを感じることもありますが、それ以上に期待に応えたいという使命感も生まれます。
また、お客様が出した要件をそのままシステムに落とすのではなく、根本にどういう問題があるか、お客様にとって何が最善かを考えられるかどうかが腕の見せどころです。
頭を悩ませて作ったシステムが本番稼働を迎え、「業務効率がとてもよくなった」「手作業でやっていた部分がシステム化されたミスが減った」と感謝してもらったときは、本当にやってよかったと思えます。デスマの疲れも吹っ飛びます。
業務知識の蓄積が武器になる
技術が好きでIT業界をめざしてSIerに入った人の中には「技術じゃなくて顧客の業務知識ばっかり覚えさせられた…」と嘆く人もいるかと思います。
そこはやっぱりミスマッチだなと思っていて、受託という仕事の性質上、どうやっても顧客の業務を知らないと仕事が円滑にできません。
SIerで技術力は不要と言いたいわけではなく、そもそもお客様はこちらも業務知識がある前提で話をしてくるため、会話ができないと信頼を失ってしまいます。
逆に業務知識を蓄えることで期待にきっちり応え、課題解決の提案やそれに関する議論までできたときは絶大な信頼を得られます。「あのときとことん議論ができてよかった」と言われたときは本当にうれしいものです。
普段知ることができない舞台の裏側をのぞける
私がBtoBの受託開発をやっていて一番面白いと思ったのは、日常生活では見ることができない舞台の裏側をのぞけることですね。
たまに食品や日用品の工場での製造過程を映すテレビ番組がありますが、「こんなふうに作られてたの!?」「工夫がすごい…!」という驚きがあってとても面白いですよね。受託開発はそれと似た経験ができる仕事だと思います。
交通の分野に限らず、金融や小売・流通などもそうだと思いますが、いちユーザーとして利用しているだけでは分からないことがたくさんあることに驚きました。
私が携わっていたシステムは交通事業者向けのため、乗客の目に触れることはありませんが、交通事業者はそのシステムを利用してサービスを提供します。
事業者の方がどんな工夫をこらして、またどれほど努力をして、乗客によりよいサービスを提供しようとしているのかという舞台裏を知ると、システムへの要求や評価が厳しくなるのも納得できました。
また、これは副次的なよかったことですが、お客様のご厚意で車両基地に留置されている車両(ちょっと珍しいやつ)の中を見せていただいたことがあって役得でした。
生活インフラを支える縁の下の力持ちになれる
BtoB案件をやっているSIerはほとんどの場合、社外の人間に自分の仕事を具体的に説明できません。会社がニュースリリースすることはあっても、個人的に「私〇〇会社のシステムに関わったよ!」と口外はできないわけです。
銀行のATMやコンビニのレジなど普段見かけるものだけでなく、消費者の目には触れないけれど、生活を支えているシステムがたくさんあります。
もちろんサービスそのものを消費者に届けているのはお客様(ユーザー企業)ですが、安定したサービスの供給はシステムなしでは実現できません。
前職では24時間365日稼働していることが“当たり前”のシステム、人命に関わる緊急性の高いシステム…など、重要なシステムも扱っていました。それらに関わることは大変さも伴いますが、他ではなかなか味わうことができない社会貢献度の高い仕事だったと思います。
社内異動でよりよい環境を手にできる可能性がある
私がSIerに入ったのは鉄道システムに関わる仕事がしたいという目的があったからなので、希望どおりの配属でまったく不満はありませんでした。
しかし、どうやらそういった目的がある人は少数派らしく、配属後しばらくして「自分には合わないし、全然楽しくないな…」と思う人もいるようです。
前職ではいくつか条件はあるものの本人が希望すれば部署の異動が可能でした。例えば、インフラエンジニアをやめて、アプリケーション開発エンジニアへ職種も部署も変えた結果、生き生き働いている人もいました。
仕事がつらくなったときは転職を考える人が多いと思いますが、SIerは事業内容が多岐にわたっているため、社内で異動して環境を変えてみることができるのはいいところですね。
SIerで楽しく働く人になるためには
Photo by Hiroyuki Takeda
SIerは非常に間口が広く、「IT業界に全然興味ないけど内定出たし…」という人から「システム開発やりたい!IT技術大好き!」という人まで本当にさまざまな人が集まります。
「こんなつもりじゃなかったのに」という人がいる一方、入ってみて受託ならではのやりがいや面白さを知り、生き生きと働いている人もいるでしょう。
ただ、よく言われているとおり多重請負構造の問題はありますし、古い体質や技術から脱せていない面もあります。また、心身の健康を損なって転職や退職を考える人がいることも間違いではありません。
そうなって初めて「転職したいけど自分には社外で通用するスキルがない…」と気づくより、元気なうちに何らかの準備はしておいてもいいのかなぁと思います。(例えば、業務でコードを書く機会がない人はpaizaラーニングで自学してみるとか…)
もちろん現在SIerで楽しく働いている人に転職を勧めたいわけではなく、もし何かあったときに選択肢があると安心、という話です。
まとめ
自身の経験を踏まえ、SIerで働いてみてよかったことをいくつかお伝えしてきました。
炎上プロジェクトを経験し理不尽な目にあってきたにもかかわらず、よかったところを思い出せるのは、何年もかけて一緒に取り組んだプロジェクトでお客様に喜んでいただけた経験があるからです。それこそ受託開発の醍醐味だと改めて思いました。
新卒・転職に関わらずSIer(受託開発)で自分のやりたいことが叶えられるのであれば、選択肢の一つに入れてみてもいいでしょう。
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